- Primera División de Argentinaアルゼンチン1部リーグ
混迷を極めているアルゼンチンサッカー界 ストライキが影響を与えた国内リーグの歴史とは
3月第1週の再開も幻に終わったアルゼンチンサッカー界が抱えている闇
▲ 混沌としているアルゼンチンサッカー界。国内のトップリーグすら予定通りに行われていない
2016-2017シーズンは当初、夏季休暇が1月いっぱいで終了して2月の第1週からトップリーグが再開されるスケジュールになっていた。ところが、テレビの放映権争いや、2部以下のリーグも含めた選手への賃金未払い問題などが解消されないまま、2月に予定されていた試合はすべて延期となった。3月の再開が早々に表明されたものの、リーグを再開するには双方の歩み寄りが不可欠という状況にあった。
するとリーグ再開の3月3日が目前になった3月2日、FAA(アルゼンチンサッカー選手組合)は下部リーグに所属する選手の未払い賃金問題が解消されるまでは試合を放棄するとストライキを発動。翌3日にAFAとの間で行われた話し合いでも決着には至らず、同日から6日にかけて行われるはずだった第15節は再延期が決まった。
AFA規制委員会のアルマンド・ペレス委員長は、FAAとの話し合いが決裂したことを受けて記者会見に臨み、「非常に残念ながら今週末に開催できなくなった。組合はこちらが提供しようとしているお金を受け入れなかった」と説明した上で、「リーグ戦の再開は来週になる」とも述べた。
▲ FAAとの話し合いが決裂し、地元メディアのインタビューに応じたAFA規制委員会のアルマンド・ペレス委員長
「金銭面の問題は報道にあるとおり。憂慮すべきは、一連の問題の解決策が今なお具現化されていないこと。状況は日を追うごとに悪化している」
上記を受けてアルゼンチンのスポーツ紙「Ole」のルーカス・カステラン記者は、アルゼンチンサッカー界で選手によるストライキはとくに珍しいものではないとしながらも、今回のストライキを“歴史的な出来事”と寄稿した。
アルゼンチンサッカー界における初のストライキは、1931年。まだアマチュアリーグだった当時は、選手に契約の自由がなかった。自由な契約を禁じる南京錠のような規則を撤廃するように求めた選手数人はその後アマチュア協会から追放されたが、この問題提起が契機となって、約1ヵ月後にプロリーグが創設されるに至った。
2度目のストライキは、日本が終戦を迎えた3年後にあたる1948年。このときは給料の増額と選手組合の拡大などを求めたもので、ストライキは半年以上続いた末に1949年5月になってようやく終了した。だがこのとき妥協策として給料の上限が1,500アルゼンチン・ペソにされたことによって、のちに亡くなるまでレアル・マドリーの名誉会長を務めた故アルフレッド・ディ・ステファノ氏を筆頭に、複数のスター選手がコロンビアなど国外に流出する事態に陥った。
以降、3月と11月にストライキが発生した1971年や、1975年、1983年、1984年、1985年、1988年、1998年、1999年と選手側によるストライキは長短を問わず断続的に発生した。
以上のように、アルゼンチンサッカー界の長い歴史においてストライキは何度も発生したが、前述の記者は一連のストライキを決してネガティブには捉えていない。「フットボール(サッカー)をより良いものにして、果ては国力のひとつとするために、さらにはプロフェッショナルとしての選手の地位向上や、文化としての定着など、あらゆる側面においてストライキは一定の効果を残してきた。もしストライキが一度もなかったら、今日のアルゼンチンサッカー界は存在しえなかっただろう」と持論を記した同記者は、愛するサッカーの健全化を考えるにあたり、どの立場の人間がどこまで適切な対応をとれるかが今後を左右するとまとめている。
様々な利権によって翻弄されているアルゼンチンサッカー界。世界屈指の強豪国であるアルゼンチンが国内のプロリーグを順風満帆に行えることと、それを妨害するような利権問題が解消されることが、最終的な着地点となるのは記すまでもない。
2017.03.03
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