- Liga MX Entrevista especialメキシコ1部リーグ スペシャルインタビュー
アルテアガ氏が見てきた母国と世界の昔と今 元日本代表監督の話から食の好みまで雄弁に語る
(取材日:2020年10月19日 ※現地時間では同月18日)
◆ マリオ・アルテアガ
- 本名:
- マリオ・アルベルト・アルテアガ・エレーラ
- 生年月日:
- 1970年11月29日生まれ()
- 出身:
- メキシコ(ハリスコ州グアダラハラ)
- 身長:
- 180cm
- ポジション:
- ミッドフィルダー、フォワード (現役時代)
故郷の名門チーバス・グアダラハラの下部組織に入団し、1990年にトップチームに昇格すると、3シーズンで69試合に出場して17ゴールを挙げた。1993年にレオンへ移籍して2シーズン活躍すると、1995年にはプーマスUNAMへ移籍。以降、チーバス・ティフアナ、ナシオナル・ティフアナなどでも活躍して、2002年にガロス・デ・アグアスカリエンテスで現役を退いた。21歳だった1992年のバルセロナオリンピックでは、メキシコ代表メンバーとしてガーナ戦にスタメン出場もしている。
引退後は指導者の道に進み、2003年にドラードス・デ・シナロアの監督に就任。以降、レオンやベラクルスなどでアシスタントコーチを務めた上で、2014年にU-17メキシコ代表の監督に就任。U-17代表では2015年にCONCACAF U-17 Championship を優勝に導くと、同年のFIFA U-17 World Cupでは4位に導いた。その後、各ユースカテゴリーのメキシコ代表で若手を指導し、現在は特定のクラブチームと契約をしていないながらも、とあるプロジェクトに参画している。元U-23メキシコ代表。好きな料理はイタリアン。
ハビエル・アギーレ(元日本代表監督)とガリンドの二人は良き手本だった
(憧れなら)選手よりもむしろチームだね。故郷のチーバス・グアダラハラが昔から好きなんだ。幼い頃ユースに入団したのも影響しているし、愛情もある。
その上で選手を挙げるなら、チーバスで私がトップチームに昇格した頃にチームメイトだったハビエル・アギーレ(のちの日本代表監督)と、ベンハミン・ガリンドの二人だね。当時の私にとって、二人とも良き手本だった。
Q. 現役時代に6つのクラブチームとバルセロナオリンピックのメキシコ代表でプレイしていますが、最も楽しかった(もしくは)思い出深いチームはどこでしょうか。
レオンだね。地元のサポーターの皆さんが、どんな状況でも一生懸命応援してくれた。それが心に残っているから、レオンにいた時期は忘れられない。
現役時代に巧いと思ったのはルイス・エンリケ、ラウール、ストイチコフ
まずは、ルイス・エンリケ(当時スペイン代表)だ。(1992年)バルセロナオリンピックで「メキシコvsスペイン」の試合があって対戦したときに、彼は抜けて巧いと感じた。
他に挙げるなら、ラウール(元スペイン代表)とストイチコフ(当時ブルガリア代表)だね。
Q. 指導者としても輝かしいキャリアの持ち主だが、とりわけ U-17メキシコ代表では2015年のCONCACAF(北中米サッカー連盟)チャンピオンシップ優勝に加えて、同年のFIFA U-17ワールドカップでベスト4という好成績を残しています。若い世代を指導する中で、重視した点や苦労した点を教えてください。
大変なのは、コンベンションすること。(サッカーを)やりたいと思わせること。なぜなら16〜17歳という、ほかへの興味が向きがちな世代に対して、サッカーに集中させるのは非常に難しかった。でもそこで“やり甲斐”を見いだせたのは、指導者として醍醐味でもあった。
「選手が責任を持つ」ことが非常に大事だ。相対的には、監督が責任を持たねばならないとなりがちだが、それで片付けるのではなく、選手の自主性を大事にした上で、個々が責任を持てばより一層成長できると信じて指導してきた。
選手の育成で非常に大事なのは “選手が責任を持つこと”
一人目は“チュキ”(イルビン)ロサーノ。今はナポリ(イタリア)で活躍しているよ。もう一人挙げるなら、ディエゴ・ライネスだね。彼はベティス(スペイン)で活躍している。強いて挙げるならこの二人かな。二人とも私がユース代表で監督を務めていた頃の教え子でね。とくに“チュキ”は当時ユース代表に呼ばれていなかったが、私が選出したんだ。彼は代表でも通用する選手だと思ってね。(“チュキ”は2020年11月17日の親善試合「日本代表戦」でもゴールを決めた。)
他にも楽しみな選手は何人もいるし、リーガMXにいる選手でも、欧州へ行って通用する選手はたくさんいるよ。
Q. 今、プロ選手で個人的に注目している選手は誰ですか? その選手のどんなところを評価していますか?
まずリオネル・メッシだ。クリスティアーノ・ロナルドと比べてもメッシのほうがいいと思うのが、ポールコントロールの重要性に長けている上に、シュート精度も高く、かつチーム全体を動かすだけの力があるから。彼にはサッカーへの信念が人一倍強いと感じる。
もう一人挙げるなら、(同じアルゼンチン人だけど)パウロ・ディバラも好きだね。ゴールをたくさん決めるし、ゴールへの執念を強く抱いているところが好き。
南米の選手にとってリーガMXはチャンスだし、給料も良い
大きな理由としては、南米の人が“メヒコ”に来るのはチャンスだと思っているのだろう。そしてお金(給料)が良い点も、南米の選手が“メヒコ”に来る理由だと思うよ。
Q. リーガMXで活躍中の選手でお気に入りは?
GK ラウール・グディーニョ (チーバス・グアダラハラ)
DF ディエゴ・レイェス (ティグレスUANL)
FW アンドレ=ピエール・ジニャック (ティグレスUANL)
今はどこも指揮していないが、また機会があればクラブチームで監督をやりたい
Q. 今は指導者のお仕事をしていませんが、将来どこかで監督をしたい考えはありますか?
今はどこかのチームを指揮していないが、参画しているプロジェクトはあるし、また機会があればクラブチームの監督もやりたいよ。事実、今もいくつものオファーがあるから。
Q. メキシコのキーパーは、過去にホルヘ・カンポスやオチョアなど小柄な選手が目立っていましたが、最近は背の高い選手が増えました。こうした変化には何か要因がありますか? 日本だと、どうしても背の高い選手がキーパーになる傾向が強いのですが。
オチョアも背が高ければその分得もあるのだろうが、これまで小柄なキーパーが選ばれていたのも身長による優劣じゃないよ。キーパーとして優秀であれば、身長は関係ない。
我が故郷グアダラハラは綺麗な街。日本に例えるなら奈良
いろいろ住んできた中で、オススメは私の故郷でもあるグアダラハラだね。21歳から20年間は仕事でいろんなところへ行ったが、どこかへ行くたびにグアダラハラに戻っていた。今は住んでいるし。
日本に例えるなら、グアダラハラは奈良かな。とても伝統的なところで、テキーラが有名なんだ。綺麗なところだし、スペインの古い街にも似ているね。
Q. 好きな食べ物を教えてください。 メキシコ料理でも外国の料理でもかまいません。
イタリアンが大好きだね。パスタひとつとっても、いろんな種類があるし味比べが楽しい。ラザニアも美味しいよね。もちろんメキシコ料理も好きだよ。
セルベーサ(ビール)は “ミチェラーダ”という飲み方が好き。日本酒は新潟で飲んだことがある
Q. お酒は好きですか? 好きな場合、何をよく飲みますか?
好きだよ。だけど、日本酒は二回しか飲んだことがないんだ。国際試合で新潟へ行ったときに、歓送会で勧められて飲んだかな。
セルベーサ(ビール)は、ミチェラーダという飲み方が好きだね。ビールとライム、グラスのふちにレモンを塗って塩を付けて、マギーを入れてライムを絞ってビールを入れて飲むんだ。
セルベーサにタバスコを入れて飲むのもオススメだよ。
メキシコのリーガMXの魅力は、競争が激しいところだ。スペインだとレアル・マドリーとバルサ(FCバルセロナ)が抜けているが、“メヒコ”では18チーム中12チームが拮抗していて、12チームがタイトルを目指して戦うのが最近の傾向。それゆえに優勝チームが毎度変わるところが、やってる方(選手・監督ら)も見てる方(観客・視聴者)も両方楽しめるところだと思う。
(了)
● オリンピックセンター オンラインコース受講 募集
メキシコ - 日本 エンラセ委員会
- 主催:
- メキシコ - 日本 エンラセ委員会
- 関連リンク:
- YouTube動画 メキシコオリンピックセンター
- 後援:
- メキシコオリンピックセンター
- 国:
- メキシコ
- 指導者対象
マリオ・アルテアガ氏自身が、日本の指導者として活躍されている方々と面談をさせていただきました。
その結果、チームのレベルに関わらず、指導者の方々が、「選手に接していくうえでの指針、指導の過程で迷ったときの助言や話し合い」を必要とされていることがわかりました。
このニーズを踏まえたうえで、同氏が、自分の経験を取り入れたコースを行っていきます。ビデオを介した講義のみならず、同氏と直接、話し合う機会を持っていただけることも、本セミナー・コースの特徴となっております。 - チーム対象
そのチームの指導者の方々とご一緒に、チームの指導を様々な角度で行います。ビデオを介した講義のみならず、チームと講師(マリオ・アルテアガ氏)が、相互にやり取りを行える絶好の機会です。
◆ ハビエル・アギーレ
- 本名:
- ハビエル・アギーレ・オナインディア
- 生年月日:
- 1958年12月1日生まれ()
- 出身:
- メキシコ(首都シウダー・デ・メヒコ)
- 身長:
- 173cm
- ポジション:
- ミッドフィルダー (現役時代)
1979年に地元の名門クルブ・アメリカでキャリアをスタートさせたが、頭角を現したのは当時存在したロサンジェルス・アズテックス(U.S.A.)を経て再加入した1981年からの3シーズンで、128試合に出場して31ゴールをマークした。その後アトランテなどを経て、1987年からはチーバス・グアダラハラで長く活躍。そのチーバス・グアダラハラでは晩年、若き日のマリオ・アルテアガ氏ともチームメイトだった。現役時代に元メキシコ代表であり、元メキシコ代表監督、かつ元日本代表監督でもある。
◆ ベンハミン・ガリンド
- 本名:
- ベンハミン・ガリンド・マレンテス
- 生年月日:
- 1960年12月11日生まれ()
- 出身:
- メキシコ(サカテカス州ロレート)
- 身長:
- 175cm
- ポジション:
- ミッドフィルダー (現役時代)
1979年にタンピコでデビューすると、1982年にはタンピコ・マデーロとして合併されたチームで1986年まで長く活躍。そして同年から1994年のワールドカップ・アメリカ大会まではチーバス・グアダラハラでレギュラーとして活躍した。その後、サントス・ラグーナ、クルス・アスル、パチューカでも活躍して、2001年にチーバス・グアダラハラで現役を退いた。引退後は2004年に古巣チーバス・グアダラハラの監督に就任すると、メキシコ国内のクラブチームで監督を歴任。元メキシコ代表。
◆ ルイス・エンリケ
- 本名:
- ルイス・エンリケ・マルティネス・ガルシア
- 生年月日:
- 1970年5月8日生まれ()
- 出身:
- スペイン(ヒホン)
- 身長:
- 170cm
- ポジション:
- ミッドフィルダー (現役時代)
1988年に地元のスポルティング・ヒホンで下部組織からBチームに昇格すると、翌1989年にはトップチームにも昇格。そして1991年には強豪のレアル・マドリーへ移籍して中盤の主軸として活躍したが、1996年には戦術や起用法を巡り対立。同年にFCバルセロナへ移籍すると、ライバルチームでも主力として安定した活躍をみせた。2004年に34歳で現役引退し、同年にはペレ氏が選ぶ「偉大な選手100人」にも選出された。2008年に古巣FCバルセロナのBチームで監督業を始めると、その後ローマ(イタリア)、セルタ・デ・ビーゴを指揮して2014年からはFCバルセロナのトップチームで監督を務めて、国内リーグや国内カップ戦、UEFAチャンピオンズリーグなど数々のタイトルをもたらした。2018年にスペイン代表監督に就任し、翌2019年には愛娘の難病を理由に一時辞任したものの、娘の病死という悲しみを乗り越えて同年11月にスペイン代表監督に再度就任した。元スペイン代表。
◆ ラウール
- 本名:
- ラウール・ゴンサーレス・ブランコ
- 生年月日:
- 1977年6月27日生まれ()
- 出身:
- スペイン(首都マドリー)
- 身長:
- 180cm
- ポジション:
- フォワード (現役時代)
ユース時代にアトレティコ・マドリーから宿敵レアル・マドリーへ移籍すると、1994年にCチームでプロキャリアをスタート。同年中にBチームを経てトップチームに昇格すると、2010年まで16年に渡ってレアル・マドリーの象徴的な選手として長く活躍した。2010年にはシャルケ04(ドイツ)に渡っても活躍し、2012年に加入したアル・サッド(カタール)でもタイトル獲得に貢献。2016年にニューヨーク・コスモス(U.S.A.)で現役を引退した。引退後はニューヨークでニューヨーク・コスモスのテクニカルアドバイザーを長く務めていたが、2017年に古巣レアル・マドリーの育成に携わると、その後各年代の監督を務めて2019年にはBチーム(カスティージャ)の監督へと昇格した。元スペイン代表。
◆ フリスト・ストイチコフ
- 本名:
- フリスト・ストイチコフ
- 生年月日:
- 1966年2月8日生まれ()
- 出身:
- ブルガリア(プロヴディフ)
- 身長:
- 178cm
- ポジション:
- ミッドフィルダー、フォワード (現役時代)
10歳でサッカーを始めると、1982年に16歳でFCへブロスでプロキャリアをスタート。1984年に加入したCSKAソフィアでゴールを量産すると、1990年に当時のヨハン・クライフ監督の熱烈な要請に応じてFCバルセロナ(スペイン)へ移籍。この移籍ではブルガリア政府との間で熾烈な交渉も生じた。気性の荒さから試合中にたびたび問題行動を起こすことでも知られたが、確かな実力でゴールを量産。1995年にパルマ(イタリア)へ渡って以降は移籍を繰り返し、1998年には柏レイソル(日本)に所属したことも。2003年にDCユナイテッド(U.S.A.)で引退。その後は2004年から3年間ブルガリア代表監督を務めるなど、指導者に転身した。元ブルガリア代表。
◆ イルビン・ロサーノ
- 本名:
- イルビン・ロドリーゴ・ロサーノ・バエーナ
- 生年月日:
- 1995年7月30日生まれ()
- 出身:
- メキシコ(首都シウダー・デ・メヒコ)
- 身長:
- 175cm
- ポジション:
- サイドハーフ
2013年に18歳でパチューカからデビューすると、すぐにレギュラーに定着。2017年にはPSVアイントホーフェン(オランダ)に活躍の場を移すと、3年間で40ゴールを叩き出した。2019年からはナポリ(イタリア)で活躍中。U-20から各世代でメキシコ代表に招集され続けている。愛称は「Chucky(チュキ)」。
◆ ディエゴ・ライネス
- 本名:
- ディエゴ・ライネス・レイバ
- 生年月日:
- 2000年6月9日生まれ()
- 出身:
- メキシコ(タバスコ州ビヤエルモーサ)
- 身長:
- 169cm
- ポジション:
- サイドハーフ
2012年に12歳で首都の名門クルブ・アメリカの下部組織に入団すると、2017年3月に16歳でトップチームに昇格。2018年からはベティス(スペイン)に活躍の場を移している。「メキシコの“メッシ”」と称されるほどのドリブラーで、ボールを持てばどこからでもドリブルで崩しにかかるのが特徴。U-17から各世代でメキシコ代表に招集され続けている。
◆ ラウール・グディーニョ
- 本名:
- ラウール・マノーロ・グディーニョ・ベガ
- 生年月日:
- 1996年4月22日生まれ()
- 出身:
- メキシコ(ハリスコ州グアダラハラ)
- 身長:
- 196cm
- ポジション:
- ゴールキーパー
2006年に10歳で地元の名門チーバス・グアダラハラの下部組織に入団してスキルアップすると、2014年には18歳でFCポルト(ポルトガル)のBチームでプロキャリアをスタート。退団までにウニオン・ダ・マデイラ(ポルトガル)やAPOEL(キプロス)への期限付き移籍も経て、2018年にかつて育ったチーバス・グアダラハラのトップチームに完全移籍で加入した。U-17時代から各世代で招集されているメキシコ代表。
◆ ディエゴ・レイェス
- 本名:
- ディエゴ・アントニオ・レイェス・ロサーレス
- 生年月日:
- 1992年9月19日生まれ()
- 出身:
- メキシコ(首都シウダー・デ・メヒコ)
- 身長:
- 192cm
- ポジション:
- センターバック、ボランチ
2006年に13歳で地元の名門クルブ・アメリカの下部組織に入ると、2010年に17歳でトップチームに昇格。2013年にFCポルト(ポルトガル)へ移籍すると、その後レアル・ソシエダ、エスパニョール(ともにスペイン)などでも活躍して、現在は母国のティグレスUANLに所属している。U-17時代から各世代で招集されているメキシコ代表。
- 出演: マリオ・アルテアガ (1992バルセロナ五輪メキシコ代表メンバー)
- 通訳: 西川瑞穂
- 取材・構成・執筆・編集: 西野寿洋 (Goleador 編集長)
- 協力: メキシコ - 日本 エンラセ委員会 (APAX Mirai Inc)
- 協力: カルロス・メロ (Carlos Melo : Televisa のスポーツキャスター)
- 協力: スポーツ留学エージェント Bridge(ブリッジ)
- 協力: 沖山友晴
- 協力: 熊谷勇