- Levain Cup / Sudamericana ChampionshipJリーグYBCルヴァンカップ/CONMEBOLスダメリカーナ 王者決定戦
旧スルガ銀行チャンピオンシップは真夏の開催が最適なのか?
ベストの開催時期はルヴァンカップ王者が国内の公式戦を言い訳にできない2月のJリーグ開幕前
【コラム】 JリーグYBCルヴァンカップ/CONMEBOLスダメリカーナ王者決定戦の開催時期に関する提案
▲ 「旧スルガ銀行チャンピオンシップ」は毎年8月上旬に行われているが…
◇ ◇ 大会の概要と経緯 ◇ ◇
2019年に採用された大会名の通り、日本のJリーグカップ(ルヴァンカップ)王者と南米のスダメリカーナ王者とが対戦するカップウィナーズカップで、2018年まではスルガ銀行がプレゼンティングスポンサーであったため「スルガ銀行チャンピオンシップ」と呼ばれた大会。2011年までは日本開催が事前に決まっていたが、以降も日本開催でJFA(日本サッカー協会)とCONMEBOL(南米サッカー連盟)が合意していて、今日に至る。
JFAの現会長である田嶋幸三氏が専務理事だった頃には、開催スタジアムについて「ヤマザキナビスコカップ(当時)優勝チームの近くにある世界クラスの施設」と言及したこともあったが、日立柏サッカー場やShonan BMW スタジアム平塚といった小規模のスタジアムでも開催されていて、ルヴァンカップ王者のホームスタジアムが原則となっている。
◇ ◇ 出場するクラブチームの優先順位と士気 ◇ ◇
ここまで12試合が行われて、優勝回数は「日本:南米=6:6」と互角。しかし、この大会に対する優先順位と士気は、スダメリカーナ王者のほうが相対的に高い。逆にルヴァンカップ王者の場合、とくに直近2年の出場チーム(セレッソ大阪、湘南ベルマーレ)の優先順位と士気が低い。いずれもJリーグを優先して、この大会ではベストメンバーを組まなかった。その結果、両者は“本気のスダメリカーナ王者”を相手に負けるべくして負けている。
スダメリカーナ王者とて、2013年に来日したサンパウロのようにサブメンバー主体で臨んだ“手抜き”の年もあった。だが全体的には、南米から来日するスダメリカーナ王者はこの大会を国際タイトルとしてリスペクトし、ベストメンバーで臨む傾向にある。
◇ ◇ 開催地が毎年日本であることは是 ◇ ◇
これまですべての試合が日本で開催されてきた事実については、治安などの安全面や来日するスダメリカーナ王者の大会への意欲など多角的に検証すればこのままで問題ないだろう。仮にこの大会を南米開催にしようものなら、ただでさえ優先順位を下げがちなルヴァンカップ王者の士気をさらに下げることにもなりかねない。
◇ ◇ 日本側がベストメンバーで臨める時期は? ◇ ◇
直近2年のセレッソ大阪と湘南ベルマーレが、この大会をベストメンバーで臨まない理由に「Jリーグ優先」がある。FIFA公認の国際タイトルを本気で獲りにくるスダメリカーナ王者との差異を「双方の考え方の違い」とする批評には同意だが、ならばルヴァンカップ王者の考え方が変わる策を講じればいいのではないか。そこで当欄は、この大会の開催時期を2月のJリーグ開幕前に移行することを推奨したい。
この大会の出場チームはどちらも前年のうちに決まるため、その両者の対戦を翌年の8月まで延ばす必要がそもそもない。1〜2月の開催はもちろん、同年の年末に開催することも物理的には可能なくらいだ。ただ、敬虔なクリスチャン(キリスト教徒)が多い南米では、家族との休暇を満喫したいクリスマスの時期に公式戦を実施する国は少なく、年末にスダメリカーナ王者に来日してもらえる可能性は低い。そしてクリスマスより早い時期になると、日本、南米ともに国内リーグが最終節を迎えるところが多く、この大会の12月開催は調整が難しいだろう。
年明けの1月開催については、どうか。この案も実現は難しそうだ。国によって国内リーグの日程は異なるが、南米各国も日本もシーズンオフである1月に開催したところで、両チームともにコンディション調整が大変だ。
以上を踏まえれば、この大会の最適な開催時期は2月であり、Jリーグの開幕前にあたる同月の上旬か中旬が望ましいと結論づける。
◇ ◇ 2月開催がベストである根拠 ◇ ◇
2019年の日程に照らし合わせると、ルヴァンカップ王者は FUJI XEROX SUPER CUP と同週か、その1週前ならJリーグの日程を気にせずに済むため、「Jリーグとの兼ね合い」を言い訳にしてこの大会に臨むメンバーの質を落とすリスクを避けられる。一方、南米では2月にリベルタドーレスのグループリーグ予備戦が行われるが、スダメリカーナ王者は予備戦を免除されるため、2月に来日してもらうスケジュールを組んでもCONMEBOLや出場チームからクレームが来る確率は低いだろう。その結果、双方ともベストメンバーで臨める態勢が整うのである。
気候を考慮しても、8月より2月開催のほうが好ましいだろう。日本の真夏は、アフリカや中東、カリブ海出身の方々をして「母国より日本のほうが暑い」と言わしめるほどの過酷な高温多湿で、サッカーをするには不向きな環境。欧州の大半が夏をオフシーズンとして、日本では高校サッカーの全国大会を冬休みに開催していることからもわかるように、サッカーの試合は相対的に夏より冬のほうが望ましい。
降雪地域のクラブチームがルヴァンカップを優勝した場合、地元での2月開催が困難であれば、そのときは埼玉スタジアム2○○2、パナソニックスタジアム吹田など雪の少ない中立地で開催すれば支障はない。
◇ ◇ 大会名が長すぎる問題 ◇ ◇
最後に。2019年はプレゼンティングスポンサーが見つからなかった事情があるものの、「JリーグYBCルヴァンカップ/CONMEBOLスダメリカーナ 王者決定戦」 という大会名は率直に長すぎる。かつての「スルガ銀行チャンピオンシップ」のように、なるべく早くプレゼンティングスポンサーが決まって、2020年以降は大会名が短く、読みやすくなればと願ってやまない。
◆ JリーグYBCルヴァンカップ/CONMEBOLスダメリカーナ 王者決定戦
- 旧大会名:
- スルガ銀行チャンピオンシップ (〜2018年)
- 主催:
- JFA (日本サッカー協会) / CONMEBOL (南米サッカー連盟) / 日本プロサッカーリーグ
- 主管:
- 開催地の都道府県サッカー協会
- 協賛:
- スルガ銀行 (〜2018年)、日本からの出場チームのスポンサーやサプライヤーなど
- 創設:
- 2008年
開催日 | Jリーグカップ優勝 | 結果 | スダメリカーナ優勝 | 入場者数 |
---|---|---|---|---|
2008年7月30日 | ガンバ大阪 | 0-1 | アルセナル | 19,278人 |
大阪長居スタジアム(大阪府大阪市) | ||||
2009年8月5日 | 大分トリニータ | 1-2 | インテルナシオナウ | 16,505人 |
九州石油ドーム(大分県大分市) | ||||
2010年8月4日 | FC東京 | 2-2 PK:4-3 | リーガ・デ・キト | 19,423人 |
国立競技場 (東京都新宿区) | ||||
2011年8月3日 | ジュビロ磐田 | 2-2 PK:4-2 | インデペンディエンテ | 19,034人 |
エコパスタジアム (静岡県袋井市) | ||||
2012年8月1日 | 鹿島アントラーズ | 2-2 PK:7-6 | ウニベルシダー・デ・チレ | 20,021人 |
県立カシマサッカースタジアム (茨城県鹿嶋市) | ||||
2013年8月7日 | 鹿島アントラーズ | 3-2 | サンパウロ | 26,202人 |
県立カシマサッカースタジアム (茨城県鹿嶋市) | ||||
2014年8月6日 | 柏レイソル | 2-1 | ラヌース | 10,140人 |
日立柏サッカー場 (千葉県柏市) | ||||
2015年8月11日 | ガンバ大阪 | 0-3 | リーベル・プレート | 12,722人 |
万博記念競技場 (大阪府吹田市) | ||||
2016年8月10日 | 鹿島アントラーズ | 0-1 | インデペンディエンテ・サンタフェ | 19,716人 |
県立カシマサッカースタジアム (茨城県鹿嶋市) | ||||
2017年8月15日 | 浦和レッズ | 1-0 | シャペコエンセ | 11,002人 |
埼玉スタジアム2○○2 (埼玉県さいたま市) | ||||
2018年8月8日 | セレッソ大阪 | 0-1 | インデペンディエンテ | 10,035人 |
ヤンマースタジアム長居 (大阪府大阪市) | ||||
2019年8月7日 | 湘南ベルマーレ | 0-4 | アトレチコ・パラナエンセ | 9,129人 |
Shonan BMW スタジアム平塚 (神奈川県平塚市) |
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2019.08.10 Goleador 編集長 西野 寿洋
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